Climate Change Initiatives at Morinaga Milk Group

森永乳業グループにおける気候変動への取り組み

森永乳業グループの商品は、乳をはじめ、コーヒー豆、茶葉、アロエなど、自然の恵みである農産物を原材料としています。これら農産物を育んできた自然に感謝するとともに、これからも自然環境を守り続けていくため、気候変動の緩和と適応への対応を進めます。

ガバナンス

森永乳業グループでは、社長を委員長、サステナビリティ本部長を副委員長、社内取締役および全本部長を委員として構成するサステナビリティ委員会を年2回開催しています。森永乳業グループのサステナビリティ活動に対する基本方針の策定、構成する部会からの報告・提案についての討議、検討を行い、取締役会への報告を通じてサステナビリティ経営の実現を図っています。

サステナビリティに関わる課題については、サステナビリティ委員会以下に「気候変動対策部会」、「プラスチック対策部会」、「人権部会」、「ウェルビーイング部会」の4つの部会を設け、部門横断的に構成させたメンバーによる方針策定や戦略立案・実行とサステナビリティ委員会への報告を行っております。専門的知見が必要な分野については部会のもとにプロジェクトを設置し、部会の議論に反映させています。

Climate change measures promotion system
活動実績
2019年12月 CSR委員会(※)にてTCFD分科会の設置を決定
2020年3月 TCFD分科会でシナリオ分析を実施(~11月)
2021年4月 CSR委員会(※)にシナリオ分析結果を報告
2021年12月 サステナビリティ委員会にて気候変動対策部会の設置を決定
2022年1月 気候変動対策部会にてTCFD開示の内容を検討(~3月)
2022年4月 サステナビリティ委員会にて、TCFD開示内容を決定
2023年4月 サステナビリティ委員会にて、1.5℃シナリオへの更新を決定

(※2021年6月にサステナビリティ委員会に改称)

戦略

2020年に設置したTCFD分科会では、2030年から2050年を想定した中長期のシナリオ分析を実施し、気候変動が社会及び当社グループに及ぼす影響を検討いたしました。特に事業活動を通じて社会課題を解決することを意識した戦略を策定しました。なお、「サステナビリティ中長期計画2030」の策定においても、その内容を考慮しております。

4℃シナリオの世界観

気温上昇により、社会や人間活動へのネガティブインパクトが顕著に現れる(物理リスク)。
気温上昇を抑制するための規制は1.5℃シナリオよりも緩やかに存在する(移行リスク)。

【健康課題:水分補給・栄養摂取】

気温上昇による発汗で失われた水分の補給、および暑熱に伴う疲労に対し、通常の食事だけでは不足する栄養を摂取する必要性が高まると推察されます。当社は既に展開している飲料、冷菓、パウチゼリー、ヘルスケア商品などの需要拡大に備え、これらを供給する体制を構築いたします。

【健康課題:感染症】

気温上昇による感染症の流行が懸念されます。ビフィズス菌BB536やラクトフェリンのように、当社は免疫に関する効果が期待できる独自の素材が複数あり、これらを使用した商品の供給を通じて社会課題の解決に貢献いたします。また、引き続き基礎研究を進め、エビデンスの収集に努めます。

社会や人間活動に対する影響や変化

気温上昇の影響から想定される社会課題

影響 主な内容 対応戦略 財務インパクト
影響度 可能性
健康:水分補給
・栄養摂取
体温調整や水分補給の必要性 飲料や冷菓、ヘルスケア商品などを既に展開しており、需要の拡大に応える。
健康:感染症 感染症リスクの高まり
  • 健康課題に配慮した商品の研究開発及び販売を行う。
  • 微酸性電解水関連の商品
    (ピュアスター)を販売する。

1.5℃シナリオの世界観

今世紀末の気温上昇を1.5℃以内に抑制するため、先進国を中心に二酸化炭素や温室効果ガスの排出に対する規制が強化される(移行リスク)。
気温上昇により、社会や人間活動へのネガティブインパクトは存在するが、4℃シナリオに比べ限定的である(物理リスク)。

【消費行動の変化:温室効果ガス排出の少ない常温ロングライフ商品】

森永乳業グループでは、無菌環境下での充填・包装によるロングライフ製法により、常温で流通・保管が可能な常温ロングライフ商品を保有しております。常温ロングライフ商品は、同カテゴリーのチルド商品と比べて、スコープ3の温室効果ガス排出量(カテゴリ9:下流の輸送・配送)を抑えることができます。これは、冷蔵での流通・保管の必要が無いこと、また、賞味期限が長く、まとめ買いや買い置きにより買い物の移動に伴う温室効果ガスの排出を減らす効果が期待できます。
温室効果ガス排出の少ないライフスタイルへの移行が進むと、当社独自の常温ロングライフ商品が市場で差別化できると考えております。豆腐については法律で冷蔵販売が義務付けられておりましたが、規格基準の改正に伴い、常温で長期保存(賞味期限216日)が可能な豆腐を2019年に発売いたしました。このような常温ロングライフ商品を販売することにより、消費行動の変化に対応いたします。

社会や人間活動に対する影響や変化

気温上昇の影響から想定される社会課題

影響 主な内容 対応戦略 財務インパクト
影響度 可能性
健康:水分補給
・栄養摂取
体温調整や水分補給の必要性 飲料や冷菓、ヘルスケア商品などを既に展開しており、需要の拡大に応える。
健康:感染症 感染症リスクの高まり
  • 健康課題に配慮した商品の研究開発及び販売を行う。
  • 微酸性電解水関連の商品
    (ピュアスター)を販売する。

気温上昇に対する課題意識から生じる消費行動の変化

影響 主な内容 対応戦略 財務インパクト
影響度 可能性
消費行動の変化 温室効果ガス排出の少ない消費行動の拡大 「常温ロングライフ商品」は家庭内の保管において、チルド商品よりも低炭素排出な(Scope3温室効果ガス排出が少ない)ことを訴求する。
プラントベース食品 特に海外で、プラントベース食品の需要が拡大 既存の豆腐製品、プラントベース食品に当社の強みである素材を加えた商品カテゴリーを拡大し、需要増に対応する。

リスク管理

気候変動リスクについては、気候変動対策部会及びサステナビリティ委員会において定期的に評価を見直し、対応を検討しております。2020年にCSR委員会(2021年6月にサステナビリティ委員会に改称)の下に設置したTCFD分科会において、2030年から2050年を想定した中長期のシナリオ分析を実施し、気候変動による影響とリスクについて検討いたしました。

全社のオペレーショナルリスクについては、内部統制委員会の下部組織であるリスク管理部会にて、定期的にリスクの洗い出しと見直しを行っております。また、個々のリスクごとに要因と対応策をまとめ、対応策についてモニタリングを実施しております。環境課題を中心としたサステナビリティ課題への対応策とその取組状況についても、サステナビリティ委員会の運営事務局を務めるサステナビリティ推進部より、リスク管理部会に定期的に報告しております。

TCFD分科会で検討した気候変動リスクの内容については、気候変動対策部会が検討を引き継ぎ、対応戦略を以下のように策定いたしました。

4℃シナリオの世界観

気温上昇により、社会や人間活動へのネガティブインパクトが顕著に現れる(物理リスク)。
気温上昇を抑制するための規制は1.5℃シナリオよりも緩やかに存在する(移行リスク)。

【気象災害】

急性の物理リスクとして想定されるのは気象災害ですが、その被害規模の目安として、2018年に発生した西日本豪雨での被害内容を調査し、商品供給を維持したものの費用損失があったことを確認しました。工場の生産設備に損傷はありませんでした。
このような災害に備え、事業継続計画(BCP)を設定し、BCPマニュアル等を作成しております。今後は全拠点を対象に、必要な設備対策を行います。

【原料調達:国内原乳】

4℃シナリオの世界では、酪農や農業生産への多大な影響が見込まれます。酪農家の減少や飼養頭数の減少と同様、気温上昇によって、国産生乳の生産量は中長期的に減少すると予想されます。特に夏季に都府県で生産量がより一層減少することにより、現在の広域調整の一つである北海道から都府県への生乳輸送量が増加することで、物流コストが増加し、調達価格への影響が懸念されるほか、需給ギャップが大きくなった場合には飲用牛乳の需要に対応できなくなるリスクもあります。
このような未来を招かないよう、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の継続的な削減に取り組みます。
国産生乳は当社商品の主要原料ですが、乳牛を飼育することによって発生する温室効果ガスは日本国内で発生する温室効果ガスの約1%を占めており、地球環境への影響も懸念されております。当社は酪農乳業界の一員として、酪農生産現場の温室効果ガス低減に取り組むことを宣言しており、その低減に向け、当社独自技術も活用して参ります。

【原料調達:海外乳原料】

当社は乳原料を海外からも調達していますが、世界的な乳原料の生産が減少することが想定されます。当社グループではドイツにあるMILEI社にて、乳糖、乳たんぱく質、ラクトフェリン等の乳原料を生産しており、乳原料の安定確保に活用いたします。また、MILEI社では2021年に機能性素材ラクトフェリンの生産能力を増強しており、健康課題への対策に活用いたします。

【原料調達:コーヒー豆】

コーヒーは冷涼で多雨な気候を好み、低緯度地方の高地で栽培されますが、気候変動の影響により、栽培可能な地域が大幅に縮小することが見込まれます。持続可能な方法で栽培している認証を得たコーヒー豆を使用することで、生産者の活動を間接的に支援するとともに、安定して原料を確保する努力を続けております。このように気候変動はあらゆる農産物に影響を及ぼします。パーム油や、包装資材に使われる紙についても同様に、持続可能な調達に努めて参ります。

事業活動において想定されるリスク
影響 主な内容 リスク分類 対応戦略 財務インパクト
影響度 可能性
気象災害 気象災害(台風・高潮)の激甚化・頻度増加により、生産事業所や物流網が被災する。 物理
(急性)
生産事業所や物流拠点のBCP対応を進める。
原料調達
(原乳)
気温上昇により、国内の原乳生産が減少する。 物理
(慢性)
気温上昇を緩和するため、国内酪農業の温室効果ガス排出削減の支援に取り組む。
原料調達
(乳原料)
気温上昇により、世界的に乳原料の生産が減少する。 物理
(慢性)
ドイツMILEI社を活用し、乳糖や乳たんぱくなどの乳原料を確保する。
原料調達
(農産物)
気温上昇により世界的にコーヒー栽培適地が減少する。 物理
(慢性)
原材料BCPを強化するとともに、持続可能性に配慮した原料調達により生産者を支援する。
炭素税 化石エネルギーの使用を抑えるために炭素税が導入され、工場操業や物流のコストが増す。 移行
(法規制)
財務影響を緩和するため、二酸化炭素を始めとした温室効果ガスの排出削減にサプライチェーン全体で取り組む。

1.5℃シナリオの世界観

今世紀末の気温上昇を1.5℃以内に抑制するため、先進国中心に二酸化炭素や温室効果ガスの排出に対する規制が強化される(移行リスク)。
気温上昇により、社会や人間活動へのネガティブインパクトは存在するが、4℃シナリオに比べ限定的である(物理リスク)。

【炭素税】

1.5℃シナリオの世界では、社会全体での温室効果ガス排出量を削減するため、化石エネルギーの使用を規制し、また再生可能エネルギー分野などを支援する財源として日本などで炭素税の導入が想定されます。
炭素税率は、国際エネルギー機関(IEA)の試算(WEO2022; Net Zero Emission)によると、日本を含む先進国では2030年以降、140ドル/トン-CO₂程度で推移すると想定されております(現在の温暖化対策税は、289円/トン-CO₂)。操業コストへの大きな影響が想定されますが、生産工場におけるエネルギー起源CO₂排出量の削減についてKPIを設定し、継続して取り組みます。
また、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出(Scope3)についても、その削減に取り組みます。

事業活動において想定されるリスク
影響 主な内容 リスク分類 対応戦略 財務インパクト
影響度 可能性
気象災害 気象災害(台風・高潮)の激甚化・頻度増加により、生産事業所や物流網が被災する。 物理
(急性)
生産事業所や物流拠点のBCP対応を進める。
原料調達
(原乳)
気温上昇により、国内の原乳生産が減少する。 物理
(慢性)
気温上昇を緩和するため、国内酪農業の温室効果ガス排出削減の支援に取り組む。
原料調達
(乳原料)
気温上昇により、世界的に乳原料の生産が減少する。 物理
(慢性)
ドイツMILEI社を活用し、乳糖や乳たんぱくなどの乳原料を確保する。
原料調達
(農産物)
気温上昇により世界的にコーヒー栽培適地が減少する。 物理
(慢性)
原材料BCPを強化するとともに、持続可能性に配慮した原料調達により生産者を支援する。
炭素税 化石エネルギーの使用を抑えるために炭素税が導入され、工場操業や物流のコストが増す。 移行
(法規制)
財務影響を緩和するため、二酸化炭素を始めとした温室効果ガスの排出削減にサプライチェーン全体で取り組む。

指標と目標

気候変動への取り組みとして、森永乳業グループでは次の指標と目標を設定しており、ISO14001環境マネジメントシステムによりグループ全体の進捗を管理いたします。
森永乳業グループでは緩和と適応により、気候変動のリスクに適切に対処いたします。緩和策としては、省エネルギーやエネルギーの低炭素化などにより温室効果ガス排出の削減に取り組みます(1~3)。適応策としては、気候変動に伴って顕在化する事業活動及び社会活動へのネガティブインパクトを回避・縮小する取り組みを行います(4~6)。

指標 2023年度実績 2024年度目標 2030年度目標
1 (工場操業による)エネルギー起源
CO₂排出量(Scope1+2)
基準年度(2013年度)比
27.5%削減
基準年度(2013年度)比
23%以上削減

38%以上削減
2 温室効果ガス排出量
(Scope3)
基準年度(2020年度)比
9.9%削減
基準年度(2020年度)比
3%以上削減

10%以上削減
3 HCFC冷媒の使用量 77.1%削減 70%削減 100%削減
4 持続可能性に配慮した原材料
使用比率
RSPO-MB認証への切替率45%
FSC認証等環境配慮紙93.6%
RSPO-MB認証への切替率80%
FSC認証等環境配慮紙100%
RSPO-MB認証への切替率100%
FSC認証等環境配慮紙100%
5 健康課題に配慮した商品
売上高
1.1倍 - 2021年度比
売上高1.7倍
6 気候変動に対応したBCP適応
拠点率
100%
※森永乳業(株)国内直系製造事業所のみ。今後、国内外連結子会社の気候変動BCP策定を行う
策定拠点率100% 策定拠点率100%

ESGデータ>環境データ

≪2023年度の取り組み≫

  • インターナルカーボンプライシング(ICP)制度を導入し、社内炭素価格を6,800円/t-CO₂に設定し、運用を開始しました。
  • GXリーグが行う排出量取引制度であるGX-ETS制度に参画し、CO2削減目標を届出いたしました。
  • 2022年度に発行したグリーンボンド(第18回無担保社債)を容器包装に使用するFSC®認証紙の購入費用等に使用しました。詳細はサステナブルファイナンスをご覧ください。
  • 持続可能な原材料の調達に関連して、RSPOサプライチェーン認証を拡大し、既存の3工場(東京多摩工場、利根工場、福島工場)に加えて8工場(盛岡工場、大和工場、松本工場、中京工場、エムケーチーズ、日本製乳、冨士森永乳業、森永北陸乳業富山工場)で取得しました。
  • 気候変動に対するBCP策定拠点率について、国内直系製造事業所で100%策定。今後、国内外連結子会社の気候変動BCP策定予定。
  • 「MO-ラグーンfor Dairy」の実証実験を進めています。また、共同研究により、乳牛に抽出後の紅茶葉を混合した飼料を給与し、ゲップ中のメタンを削減する効果を確認しました。
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