2023年10月25日 お知らせ

森永乳業×信州大学×ノーサンファーム×森永酪農振興協会

紅茶粕を乳牛に給与することで、メタン生成量を約9%削減する効果を確認 ~国際酪農連盟(IDF)ワールドデーリィサミットにて発表~

森永乳業は、信州大学、ノーサンファーム(日本農産工業グループ)、森永酪農振興協会との共同研究により、乳牛に抽出後の紅茶葉(以下、紅茶粕)を混合した飼料を給与し、ゲップ中のメタンを削減する効果を確認しました。

この研究成果を10/16(月)~10/19(木)にアメリカ合衆国・シカゴで開催された、国際酪農連名(以下、IDF)主催のワールドデーリィサミットにて、発表しました。

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1.ワールドデーリィサミットの概要

ワールドデーリィサミットを主催するIDFは、1903年に設立された非営利的、非政治的な世界規模の酪農乳業界のNGOで、現在欧米・オセアニア諸国を中心に43か国が加盟しています。日本は1956年に加盟し、国際酪農連盟日本国内委員会(JIDF)としてIDF活動に積極的に参画しています。酪農乳業の科学的、技術的及び経済的発展を推進することを目的とし、世界の酪農乳業界の情報を発信しています。IDFワールドデーリィサミットは、世界の酪農乳業界における最大の年次イベントであり、業界関係者が一堂に会し、社会面、経済面、環境面の持続可能性、栄養・健康、規格、安全性と品質、技術イノベーションなど、さまざまな課題を共有して、情報や知識を交換するための機会となっています。今年度は世界各国から約2,000名が参加しました。

 

2.発表内容

▼演題

 Suppression of methane production from rumens of dairy cows by feeding post-extracted black tea lees
 (抽出後の紅茶粕給与による乳牛ルーメン(第一胃)からのメタン生成の抑制)

 

▼研究背景  

乳牛は牧草などを胃で発酵させ、消化し、私たちが利用可能な生乳を生産してくれていますが、発酵の際に発生するメタンが牛のゲップの中に含まれ、これが温室効果ガスとして地球温暖化に影響しているとの指摘がなされています。このため、乳牛の消化管内のメタン生成菌の活動を抑制するための研究、中でも海藻や植物を用いた研究が世界中で行われてきました。
一方、紅茶飲料の製造において、これまで廃棄物としていた紅茶粕にも様々な成分が残存していることが分かってきました。そこで森永乳業で販売している紅茶飲料(紙パック)製造後の紅茶粕に着目し、当社の紅茶粕を原料とした飼料を乳牛に給与することで、酪農経営における温室効果ガス排出量削減に有効かどうかを検討しました。

 

▼研究方法

搾乳牛を2群に分け、試験群には紅茶粕を2%(乾物重量中)混合した飼料を給与し、対照群には紅茶粕を含まない飼料を給与しました。両群から第一胃内の発酵液を、胃管を用いて非外科的に採取しました。採取液を直ちに人工培養し、得られた発酵ガス量とガス濃度をもとにメタン発生量を測定しました。

 

▼研究成果と考察

今回の試験において、メタン発生量は胃液を採取した個体の泌乳量と負の相関があることがわかりました。さらに、一連の試験データを対象にした重回帰分析により、紅茶粕の給与量に応じてメタン生成量が減少することを示す結果が得られました。この結果をもとに、モデル泌乳曲線(305日間)における、紅茶粕を乾物中2%給与したときのメタン発生量を推定したところ、給与しないときと比べてメタン発生量が約9%減少すると推定されました。また、本研究の条件下では、紅茶粕の給与が乳牛の生産性、健康状態、および生乳の風味にも影響を与えないことを確認しています。
乳牛を用いた試験として、当社で初めて紅茶粕でのメタン抑制効果を確認できました。紅茶粕を活用することで、酪農乳業界のメタン削減への貢献を目指します。

 

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