日本の消費者に向けたミルクコーヒーのフレーバーホイールを開発 ~科学雑誌『Food Science and Technology Research』掲載~
森永乳業は、「食のおいしさ・楽しさ」と「健康・栄養」を両立した企業を目指し、その実現に向けた研究開発に積極的に取り組んでいます。このたび、こだわりのミルクとコーヒーを中心とした商品をラインアップするブランド「マウントレーニア」に関する研究の一環として、ミルクコーヒーの多様な風味特徴を理解・表現し、お客さまにおいしさを伝えるコミュニケーションツールとして活用していきたいという想いから、日本の消費者に向けたミルクコーヒーのフレーバーホイールを開発し、「フレーバープラットフォーム」として商標化しましたので、ご報告いたします。なお、本研究成果は、科学雑誌「Food Science and Technology Research」に2023年5月20日に掲載されました※1。
1.研究背景
フレーバーホイールとは、食品の風味特徴を表す用語を円状に並べたものであり、専門家や消費者が、共通の用語によって食品の風味特徴についてイメージを共有しやすくなることから、相互のコミュニケーションにお役立ていただけます。フレーバーホイールは、ワインやビールなど様々な嗜好品で開発、報告されています。コーヒーにおいては、コーヒー豆の産地や焙煎度の違いによって生じる風味差に加え、ミルクや砂糖を添加して飲用することも多く、ミルクコーヒーの風味はそれらのバランスによって多様に変化するにも関わらず、これまでミルクコーヒーのフレーバーホイールはありませんでした。また、既存のフレーバーホイールは、専門家によって表現された用語で構成されており、一般には馴染みが無い用語が含まれます。そこで森永乳業は、ミルクコーヒーの風味を表現する用語を消費者から収集し、得られた用語を用いて、消費者のためのミルクコーヒーのフレーバーホイールを開発しました(図)。
図 消費者のためのミルクコーヒーのフレーバーホイール「フレーバープラットフォームⓇ」
2.研究方法
①用語の収集
(1)下記を組み合わせて、60種類のミルクコーヒーサンプルを作製しました。
コーヒー豆(5産地)
コーヒー豆の焙煎度(中煎り、深煎り)
ミルクとコーヒーのバランス(ミルク強め、コーヒー強め)
砂糖(有り、無し)
ミルクの乳脂肪分(成分無調整牛乳、低脂肪牛乳)
(2)203名の消費者が飲用し、感じた風味特徴を自由記述することで用語を収集しました。
②用語の選定
(1)飲料開発従事者12名によるディスカッションを通じて、曖昧な用語、重複している用語、及びミルクコーヒーの風味特徴の記述に不要と考えられる用語を削除しました(定性的スクリーニング)。
(2)203名中1名しか使用していない用語を削除しました(定量的スクリーニング)。
③構造化
得られた用語をカテゴリーごとにグループ化し、円状に並べてフレーバーホイールを作成しました。
④用語の検証
選定した用語を用いたCheck-all-that-apply(CATA)法※2により、以下のミルクコーヒー6品の官能評価を実施し、選定した用語の妥当性を検証しました。
サンプル内容
・ブラジル産コーヒー豆、深煎り
・ブラジル産コーヒー豆、深煎り、コーヒー量多め
・ブラジル産コーヒー豆、深煎り、砂糖配合
・ブラジル産コーヒー豆、中煎り
・エチオピア産コーヒー豆、深煎り
・エチオピア産コーヒー豆、中煎り
3.研究結果
①用語の収集
ミルクコーヒーの風味特徴を表す456語を消費者から収集しました。
②用語の選定
スクリーニングの結果、53語を選定しました。
③用語の検証
CATA法によるミルクコーヒー6品の官能評価の結果、
・サンプル間の用語の選択頻度において、53語中42語で有意差が認められました。
・すべての用語が評価に使用されました。
・サンプル間の風味特徴の違いを表現することができました。
・CATA法によるサンプルの識別結果は、訓練された定量記述分析パネル(QDAパネル)で同じ6サンプルを評価した結果と、統計的に類似していることを確認しました。
4.まとめ
ミルクコーヒーの風味を表現する用語を消費者から収集、選別し、得られた用語を用いて、消費者のためのミルクコーヒーのフレーバーホイールを開発しました。森永乳業では、これを「フレーバープラットフォーム」として商標化しました。ミルクコーヒーの多様な風味特徴を理解・表現し、お客さまに伝えるコミュニケーションツールとして活用していきたいと考えています。今後も、多くのお客さまがミルクコーヒーのおいしさ、風味の多様性を楽しむことができるように、製品開発、技術開発を進めて参ります。
<参考>
※1 論文タイトル・著者・DOI
「A milk coffee flavor lexicon developed based on the perceptions of Japanese consumers and its application to check-all-that-apply questions」Hatakeyama Shinichiro, Kawaguchi Toshiyoshi, Yamaguchi Takuya, Yoshihara Daisho, Takahashi Kana,Akiyama Masayuki, Koizumi Reiko, Miyaji Kazuhiro, Takeda Yasuhiro, Mito Kokawa, Kitamura Yutaka
https://doi.org/10.3136/fstr.FSTR-D-22-00176
※2 Check-all-that-apply (CATA)法
提示した用語の中からサンプルの風味特徴を表すと思う用語を評価者がチェックし、用語がチェックされた数を基にして、各サンプルの特徴の違いを把握する官能評価手法。
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