腸内環境を整えるメリットとは
腸内にはおよそ数百種類の細菌がおよそ40兆個も生息していると言われており、それらの細菌が集まってできたものを腸内フローラといいます。
理想的な腸内フローラの状態は、いろいろな種類の細菌がバランスよく共存している状態です。その中でもとくに「善玉菌」と呼ばれる腸や体に良い働きをする菌を増やすことが、腸活には大切であると考えられています。
善玉菌は腸の消化吸収を助けたり、ビタミンや短鎖脂肪酸(酢酸・酪酸など)といった体に良い物質をつくったりする働きがあります。
主な善玉菌の例としては、以下のようなものがあげられます。
POINT
・ビフィズス菌
善玉菌の代表的存在で、ヒトの健康との関わりが多く研究されている。オリゴ糖や食物繊維をエサにして酢酸や乳酸を産生することで、腸内での悪玉菌の増殖を抑制する。
・乳酸菌
消費した糖から50%以上の乳酸を作る菌の総称。ヨーグルトやチーズなどの発酵食品に多く含まれる身近な菌だが、ヒトの腸内フローラには実はそれほど多くない。
・酪酸菌
短鎖脂肪酸である酪酸を産生する菌の総称。大腸が正常に働くために酪酸は不可欠な存在であり、ヒトに健康との関りが多く報告されていることから近年注目されている。
腸活で、このような善玉菌を増やす食べ物を積極的に摂取していくことで、お通じの調子を良くしたり体を健やかな状態へと整えたりする効果が期待できます。
腸活に大切!腸内環境を整える成分とは
腸内の善玉菌の割合を増やす食事には、大きく分けて二通りあります。
まず一つは、ビフィズス菌や乳酸菌などの生きた善玉菌(プロバイオティクス)を直接摂取する方法で、主に発酵食品の摂取があげられます。
もう一つは、善玉菌のエサとなり、腸内にもともと存在する善玉菌の数を増やす作用のある食品(プレバイオティクス)を摂取する方法です。
ここでは、プレバイオティクスの代表である食物繊維やオリゴ糖の役割についてくわしくお伝えします。
食物繊維
日本人の食事摂取基準(2020版)によると1日の食物繊維の目標量は、18~64歳の男性で21g以上、女性で18g以上とされています。しかし、令和元年度国民健康・栄養調査より男女ともに50代以下では食物繊維の摂取量が1~3gほど目標量に達していないのが現状です。
食物繊維は、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の大きく2種類に分けられます。
水溶性食物繊維
水溶性食物繊維は水に溶けやすく、溶けるとゼリー状になって、ねばねばサラサラするのが特徴です。腸内細菌の栄養源となって善玉菌を増やし、さらに発酵・分解されて作られた短鎖脂肪酸が腸内環境を整えます。
また、その性状から腸内で便の滑りを良くする効果も期待できます。
この水溶性食物繊維を多く含む食品は、以下のとおりです。
POINT
・イモ類…さつまいもなど
・豆類…高野豆腐など
・海藻類…わかめ、もずくなど
・穀類…オートミール、そばなど
・野菜類…かぼちゃ、春菊など
不溶性食物繊維
不溶性食物繊維は水に溶けにくく、さらに腸内細菌の分解を受けにくい特徴があります。そのため体内で水分を吸収することにより、便の容積を増やす効果があります。
また、便の容積が増える際に大腸が刺激されることにより、お通じが促進されます。
不溶性食物繊維を多く含む食品は、以下のとおりです。
POINT
・穀類…玄米、マカロニ、ポップコーンなど
・豆類…大豆、小豆、えんどう豆など
・きのこ類…しいたけ、エリンギなど
・野菜類…大根、ブロッコリー、ごぼうなど
オリゴ糖
オリゴ糖には、腸内環境を整えるために必要な善玉菌を増やす成分です。
ブドウ糖や果糖などの単糖が3~10個ほどつながった構造をしており、そのつながり方によってフラクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖などさまざまな種類があります。
さらにオリゴ糖は、その性状によって消化性と難消化性に分けられます。このうち、お腹の調子を整えるのに主に役立つのは、消化されずに大腸まで届く難消化性オリゴ糖です。ただし、難消化性オリゴ糖は摂りすぎるとお腹が緩くなる、またはお腹が張るような症状が出る場合があるため、適量を摂取するように心がけましょう。
オリゴ糖を多く含む食品は、以下のとおりです。
POINT
・豆類…大豆、きなこなど
・野菜類…ごぼう、たまねぎ、にんにくなど
・甘味類…サトウキビ、ハチミツなど
・果実類…バナナ、リンゴ、キウイフルーツなど
腸活におすすめの食べ物&飲み物と簡単レシピ
腸内環境を整えるために効果的な食べ物や飲み物は、腸活をするうえでは欠かせません。
食事の際に意識して摂取することにより、腸内環境を改善する効果が期待できます。
ここでは腸活におすすめの6種類の食べ物・飲み物を紹介します。
それぞれ含まれる栄養素や摂りやすさなども異なるため、いろいろな食品をうまく組み合わせて摂取するようにしましょう。
手軽にできる簡単レシピもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
納豆
発酵食品である納豆には、微生物が発酵の際に作り出す酵素が豊富に含まれています。
また納豆は発酵食品でありながら、食物繊維が多く含まれる食品です。
納豆に含まれる納豆菌は、生きたまま腸に届いて善玉菌を活性化させ、さらに悪玉菌を抑制する報告があるなど、腸内環境の改善に効果が期待できます。さらにキムチなどの発酵食品をプラスすることで、より腸への良い働きが期待できるでしょう。
ヨーグルト
ヨーグルトは朝ごはんタイムなどに手軽に取り入れやすい食品です。
ヨーグルトに含まれる乳酸菌やビフィズス菌が、善玉菌の活性化に役立つ代謝物質を作り出すことにより、腸内環境を整える効果が期待できます。
フルーツがトッピングされているなど、一緒にさまざまな食材や栄養素が入った商品も多く販売されているため、ご自身の好みに合ったものを選ぶと良いでしょう。
ヨーグルトを使ったレシピもあるため、参考にしてみてください。
ヨーグルトと発酵食品の味噌を合わせた、時間を置かずに作れる即席キムチです。ヨーグルトベースのたれに漬け込むと、じっくり漬け込んだような旨みが味わえます。
▶ 即席ヨーグルトキムチのレシピはこちら
海藻類
わかめやひじきなどの海藻類は食物繊維が豊富に含まれており、摂取することで腸内環境の改善に効果が期待できます。
上述のとおり、食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、どちらも摂取することが望ましいとされています。
海藻類は水溶性と不溶性のいずれも含んでいるため、腸内環境を整えるのにぴったりの食材です。お味噌汁や海藻サラダ、酢の物などで手軽に摂取できるので、普段から積極的に料理に使用していきましょう。
きのこ類
きのこ類には不溶性食物繊維がふんだんに含まれており、その他にもうまみ成分のグルタミン酸や代謝アップのビタミンB1など、多様な栄養素が入っています。
きのこにはえのきやしめじ、しいたけなど種類が豊富で、さまざまな料理に活用できるため、飽きずに摂取できるのも大きな利点です。
また、1年を通して安価で手に入る物が多いため、料理に使いやすく重宝される食材です。
甘酒
米を発酵して作る甘酒は『飲む点滴』と呼ばれるほど栄養価が高い飲み物です。
そんな甘酒には、食物繊維と似た働きを持つレジスタントプロテインが多く含まれています。
昔は冬場に飲むイメージでしたが、最近では1年を通して販売されているため、いつでも手に入りやすくなりました。やさしい甘みで飲みやすく、さらに砂糖の代わりの調味料として使用することもできます。
牛乳
牛乳に含まれる乳糖や難消化性オリゴ糖は、一部大腸に届いて腸内細菌により分解されて乳酸や酢酸を生成し、善玉菌が優位になる環境へと導きます。
その結果、腸の働きを高めて、お通じの改善効果が期待できます。牛乳はそのまま飲む以外にも、ご飯やお菓子作りなどでも使用できます。ぜひ本日の献立に牛乳を取り入れてみましょう。
腸活におすすめの食材である食物繊維が豊富であるきのこと牛乳を使ったスープです。
簡単に作れるので料理が苦手な方にもおすすめです。朝食や夕食の一品に加えてみてはいかがでしょうか。
▶ きのこミルクスープのレシピはこちら
腸活にサプリは効く?
腸内環境を整えるためには、普段の食事以外にも、必要な栄養成分を手軽に摂取できるサプリメントの活用もおすすめです。
腸活に用いられるサプリメントには、乳酸菌・ビフィズス菌・酪酸菌などの善玉菌が含まれるものや、食物繊維・オリゴ糖などの腸内環境をサポートする成分が含まれるものなど、さまざまな種類があります。
そのため普段の食事と合わせてサプリメントを利用することで、より効果的に摂取することができるでしょう。
また、サプリメントには錠剤やカプセル剤、液剤など剤形や飲み方も多種多様な商品があります。ご自身が取り入れやすく、毎日続けられる商品を選ぶことが大切です。
食事やサプリメントで腸内フローラを整えよう!
この記事では、スムーズなお通じや健康な体を維持するためには、普段の食事を工夫して腸内を善玉菌が多い状態へと整えていくことが大切であるとお伝えしました。
普段の食事から十分な栄養成分が摂取できない場合には、サプリメントでの補給もおすすめです。ご自身のライフスタイルに合わせて、腸活に良い食事や栄養素をうまく取り入れ、腸内フローラを整えていきましょう。
この記事の参考資料
若菜宣明ら(2017)食べ物と腸内細菌,日本母乳哺育学会雑誌,11 (1)19-24
関沙織ら(2022)乳酸菌およびビフィズス菌とその代謝物を含む豆乳発酵食品の摂取が健常成人の便秘傾向に及ぼす影響,腸内細菌学雑誌,36,199-208
この記事の監修
藤原智沙恵(ふじわらちさえ)
メーカーでヘルスケア用品や衛生用品の研究に従事し、成分解析から商品開発、特許出願まで幅広く携わる。転職して5年間薬剤師として調剤薬局に勤務し、患者さまへの服薬指導や健康サポート、在宅医療などを経験、研修認定薬剤師の資格を取得する。
現在は、株式会社Officeファーマヘルスを設立し、医療・健康分野の情報発信に携わっている。