LESSON 2
腸内細菌は健康を守るディフェンダー!?
病気になるのも、元気になるのも、腸内フローラや腸内環境次第!?
今回は、私たちの健康に“想像以上”に関わっている腸のスゴイ役割について学びます。
大腸は最後の砦!?私たちの健康との関係とは
- 大腸は病気になりやすいイメージがあります、どうしてでしょうか?
- それは大腸に腸内細菌が棲んでいるから。腸内細菌のコンディションの影響を受けやすいのです。
私たちの身体はスーパー
ディフェンダーに
守られている......!?
read more
レッスン1で大腸に棲む腸内細菌たち(腸内フローラ)が一つの生き物のようにチームとして働き、その働きは腸内の環境次第というお話をしましたね。普段は種類の異なる大量の細菌がバランスを取りながら棲んでいますが、私たちヒトはいろいろな食べ物を口にすることから、腸内の環境が変化しやすいとも言えます。腸内環境と腸内細菌の働きは連動しているので、大腸はその影響をダイレクトに受けやすいのです。
口から入った食物が体外に出る最後の段階で通る大腸は、いわば最後の砦。大腸に棲む腸内細菌たちは腸内が良い環境にあると鉄壁の守りをみせてくれます。小腸で消化・吸収できなかった食物を身体に有益な栄養物質やエネルギーへせっせと作りかえてくれたり、腸のぜん動運動を促進して排泄をスムーズにしてくれたり、外部から侵入した病原菌やウイルスをブロックして身体を守ってくれたり。八面六臂の大活躍は、守備にも攻撃にも貢献する優れたディフェンダーに似ています。その活躍の結果、私たちの健康が維持されているというわけです。
腸内細菌が“監督”?免疫細胞が“選手”?
- 病気予防には免疫力も大きな要素だと思いますが、腸は僕たちの免疫とも関係するのでしょうか?
- はい、腸内細菌は常に私たちの免疫細胞に刺激を与えることで、健康を保つ役割をしていると考えられています。
腸内環境の良し悪しが、
免疫力を左右する......?
read more
ウイルスや病原菌といった“招かれざる侵入者”から私たちを守るため、身体に備わっている防御機構が「免疫システム」。食べ物とともにウイルスや病原菌が流れ込み、常に危険と隣り合わせの状態にある腸には、すべての免疫細胞のなんと6〜7割が密集していて、いざという時のためにスタンバイしているんですよ。
「免疫力が高い、低い」なんてよく言いますよね? 実はこの免疫細胞たちの働きに大きく寄与するのもまた腸内細菌なんです。腸内細菌と免疫細胞は、監督と選手の関係と例えても良いかもしれません。免疫細胞は外部からの侵入者への対応法や戦い方を腸内細菌から刺激を受けることで指導され、私たちの健康に役に立つよう育てられたり、バランスを保ったりしているんです。
腸内細菌の指導力の差は、腸内環境の良し悪しの差。高い指導力(=良い腸内環境)のもとでは免疫細胞たちは身体のためになる働きを貪欲に学び統制のとれたチームとして機能する一方、指導力が低い(=悪い腸内環境)状況ならば、ポテンシャルが高い免疫細胞もその能力を十分引き出されないのです。良い指導者のもとで、選手達がチーム一丸となって能力を最大限に発揮できるのと同じですね。
腸内細菌は、脳を含めたさまざまな臓器、
全身の疾患に関係している?
- 腸以外にも、腸内環境と僕たちの健康にはつながりがありますか?
- 肝臓や心臓などその他の臓器や、肥満やアレルギーにも関係があります。近年は認知機能や精神状態とも関係しているとされています。
脳や心の元気にも、
腸内環境が影響している......?
read more
腸内細菌は菌自体が免疫細胞に刺激を与えるだけでなく、酢酸などの短鎖脂肪酸やビタミン類をはじめ、実にさまざまな物質を生成し私たちの内側から影響を与えています。加えて、ヒト自身が作り出す情報伝達物質(ホルモンやサイトカイン)の分泌にも大きく関与していることがわかっているんです。
ヒトの腸内環境から生まれる物質の一部は、血液とともに全身を巡ります。加えて腸管にはさまざまな物質を認識し、全身へ物質に応じた信号を送る機能が備わっているため健康への影響は腸内に収まりません。また、大腸は不要な物質が体内に入ってこないようにするバリア機能があるのですが、腸内細菌のバランスが崩れることでこのバリア機能が低下し、有害な物質が体内に入りやすくなってしまうと考えられています。これが肥満をはじめとする全身の炎症性疾患の原因ではないかと言われています。
最近特に注目されているのは脳(認知機能)や心(精神状態)との関係です。ストレスで緊張するとお腹がキューッと痛くなった経験がある方も多いでしょう。「脳腸相関」という言葉が聞かれるようになりましたが、身体中にはりめぐらされたネットワークを通じて脳と腸は密接に情報を交換していることが知られています。脳・心と腸内細菌の研究は世界中で実施されていて、認知機能の進行度やさまざまなメンタルヘルスにも腸内細菌が関係することがわかってきているんですよ。
腸内環境を整えることでコンディション改善を。
- 心身のコンディションを保つためには、やはり腸が鍵ということでしょうか?
- そうですね、腸内環境を整えることは、メンタルを安定させるために必要なことかもしれません。
腸が心身に影響を
およぼすそのワケは......?
read more
大腸を単なる排泄器官と捉えている方からすると、腸内細菌がこれほど心身に重要な役割を果たすと聞けば驚きますよね。実は生命の進化の過程を振り返っても、腸は最初にできた器官なんです。腸を有した生物が進化を遂げて、脳をはじめとする他の器官をもつようになったと考えられているので、腸が身体の中心的役割を果たすのは、ある意味必然とも言えます。
もちろん、私たちの身体は複雑です。腸さえ気にかけていれば万全とは言えませんが、レッスン1でお話したとおり腸内細菌の状態は食生活を含めた日々の生活習慣で変わります。腸内細菌を気にかけることは、健康を気にかけること。ぜひ、小さなことから取り組んでみてください。