LESSON 1
腸内フローラと人間は、一つのチーム!?
私たちの元気やキレイと、密接に関係している腸。
そのヒミツは「腸内フローラ」にあるといわれています。
ビフィズス菌トレの基本のキ、腸内フローラの役割や特長をまずは学んでいきましょう!
腸内フローラは、“一つの臓器”にもたとえられる!?
- 僕たちの健康は「腸内フローラが鍵」とよく聞きますが、そもそも腸内フローラってどんなものですか?
- 大腸の中でお花畑のように広がる腸内細菌のことです。腸内フローラと人間は運命を共にする“共同体=チーム”なんですよ。
元気もキレイも腸内フローラが
関係している......?
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腸は大きく小腸と大腸に分けられますが、小腸の位置はおへそを中心にした身体の真ん中あたり、大腸はその周囲を取り囲むように位置しています。数百種類といわれる腸内細菌のほとんどは大腸に棲んでいて、その数は約40兆個といわれています。わずか1.5mほどの大腸に細菌がひしめきあっていて、顕微鏡で覗くとまるでお花畑(英語でflora)のようだということで「腸内フローラ」と古くから呼ばれています。現在、研究の分野では腸内細菌叢やマイクロビオータ(microbiota)などと呼ばれることが一般的です。
この腸内フローラは、たくさんの菌が共生しあって活動し、我々ヒトに影響を及ぼしていることから、しばしば「一つの臓器」としてたとえられています。腸内細菌は普段、健康をサポートしていると考えられますが、バランスを崩してしまうと逆に病気など不調の原因になってしまうことも。私たちの元気もキレイも、その差を生み出している原因のひとつが腸内環境と考えられているのです。
腸内細菌がいない人は存在しません。私たちと腸内フローラは運命共同体であり、一つのチームです。良い腸内環境とは、腸内細菌という集団がその人の身体にとって良い物質をたくさん作れるバランスにあること。「腸内環境を良くしましょう」とは「腸内細菌たちが良い方向に活躍できる環境を整えましょう」ということなんですよ。
腸内細菌はそれぞれ得意なポジションで大活躍!
- 腸内環境向上のためには、身体に良い働きをする菌を増やせばいいのでしょうか?
- 間違いではありませんが、ストライカーばかりでは試合になりません。“総合力で強くなる”という視点が大事です。
腸内細菌たちが繰り広げている
連携プレーとは......?
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腸内細菌は「善玉菌(良い働きをする)」「悪玉菌(悪い働きをする)」「日和見菌(状況に応じて善にも悪にも働く)」で構成されていると聞いたことがあるかもしれませんね。「悪玉菌は悪者だから、いない方がいい?」「善玉菌100%にすれば腸の能力は最大限になる?」いえいえ、腸内細菌は複雑に相互作用することで、ヒト腸管も含めた協調的な“腸内生態系”を構築しています。数百種類もの腸内細菌はさまざまな性質・役割・機能をもち、相互に影響しあいながら働く一つのチームです。最近は腸内細菌のそれぞれを単純に良い、悪いと色分けできないという考えが通説になっているんですよ。
サッカーでストライカーだけを揃えれば試合に勝てるでしょうか? アシストする選手、守る選手、司令塔となる選手......異なる得意分野を持った選手が連携しながら、カバーし合い、ポジションを崩されることなく総合力を発揮できるチームが強いですよね。それは腸内も同じこと。例えば、食物繊維は腸内細菌のエサになると言われていますが、細菌の種類によってエサが異なるので、特定の菌だけでは食物繊維を有効活用しきることはできません。また、他の腸内細菌が作り出す物質や食べ残しをエサにする腸内細菌もいます。つまり悪玉菌のこぼれ球からシュートを決める善玉菌というのも場合によってはあり得るわけです。他にも、肥満を引き起こす腸内細菌と言うと悪玉菌と捉えられがちですが、エネルギーを効率的に吸収・蓄積することに役立っているという観点では体に良い作用を持っているとも言えます。特定の細菌、特定の機能ばかりが強く(弱く)なってしまうことが問題で、チームのバランスを整えて総合力を上げる、という視点がいちばん大事なんですよ。
多様な控えメンバーがいることが
腸内フローラの強さの証!
- ではズバリ、総合力の高い、いい腸内フローラを作る秘訣を教えてください!
- 選手層をとにかくぶ厚くすること。どんな変化にも対応できる“細菌の多様性”を育むことがポイントです。
多様な腸内細菌がいつでも
出番を待っている......?
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総合力をあげる秘訣は腸内細菌の“多様性”。腸内は身体の中でも特に著しく環境が変化します。日々、さまざまな食物が入ってくることが大きな要因ですが、普段の生活様式や体質、体調などにも影響を受けますし、予想外の菌が侵入してくることもあり予想がつきません。だからこそ、変化に柔軟な対応ができるよう、多様な細菌が棲んでいることが大切なんです。
腸内に棲む細菌たちは、その全てが常に同じように活動をしているわけではありません。普段は特に活躍していないように見える細菌もいますが、それはいわば控え選手のようなもの。ひとたび彼らの力が必要となる状況がくれば、第一線へと躍り出て、しっかりと役割を果たしてくれるのです。細菌それぞれに得意分野が違うので、変化の激しい腸内では層が厚ければ厚いほど、不測の事態を受け止められる可能性がぐんと広がるんですよ。
細菌たちは必要なエサを与えられないと淘汰されますから、多様性を保つには、バランスの良い食事が一番大切ではないかと考えています。極端な話、お肉ばかり食べていたら、お肉に対応できる細菌以外はいなくなり、他の状況に対応できなくなる事態にも陥りかねません。「偏食は良くない」「好き嫌いしないように」と言われるのは、私たちの生命・身体に必要な栄養素を取る、という意味ですが、実は腸内細菌の多様性を維持する観点からも、とても理にかなっているんですよ。
日々の食事は、腸内細菌たちのトレーニングに欠かせません。腸内フローラを育てるつもりで、食事を考え直してみるとさまざまな発見があるはずです。
腸内環境を
変化させるのは、
食事や加齢などさまざま。
- 腸内フローラを良い状態に保つことが大事なんですね。腸内環境はどのような要因で変化するのですか?
- 食事、薬、遺伝子、加齢、ストレスなど実にさまざまです。常に腸内環境に心をくばるようにしましょう。
現代社会は、腸内環境に
やさしくない社会......?
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腸内環境に変化をもたらす一番の要因は普段の食生活です。他には抗生物質をはじめ薬の服用でも腸内細菌のバランスが変化しますし、遺伝的に受け継いだ体質や日常生活から受けるストレス、さらに加齢も腸内環境を変える大きな要因です。腸も身体の一部ですから、十分な睡眠や適度な運動といった健康の土台づくりももちろん密接に関係します。
食生活が偏り、ストレスも多い現代は、腸内環境がいつもバランスを崩して悪化しかねない危険にさらされていると言えます。でも諦めないで。私たちの身体を構成するさまざまな臓器と比べてとても変化しやすい腸内細菌は、良い方向にも変えやすいとも言えます。今日の食事、今日の過ごし方に少し気をくばるだけで、未来が大きく変わっていきます。腸内フローラは、私たちとともに人生を歩む運命共同体。変化してしまうことを意識しながら、いつも良い状態に保てるよう意識して毎日を過ごしましょう。