LESSON 3
ビフィズス菌は腸内専属プレーヤー!?
全身の健康の要である大腸。その大腸の元気を支えている要素のひとつがビフィズス菌です。
知っているようで意外と知らないビフィズス菌の働きについてお話しします。
ビフィズス菌は健康な赤ちゃんから見つかった?
- ビフィズス菌が注目されたのはどのような理由からですか?
- 赤ちゃんの健康のために研究を始めたところ、大人の健康にも関係があることが次々とわかってきたからです。
ビフィズス菌は、
おなかから私たちを
応援してくれている......?
read more
ビフィズス菌研究の歴史は長く、世界で初めてビフィズス菌が発見されたのは今から100年以上前。その後の研究で、健康な赤ちゃんに棲む腸内細菌の大半はビフィズス菌であることが明らかとなり、さらに大人の健康にも重要な役割を果たしていることが徐々にわかってきたんです。
今ではビフィズス菌入りの乳製品がたくさんあるので、ビフィズス菌=乳製品のイメージがありますよね。ですがビフィズス菌は本来腸内に棲んでいる生き物ですから、これを生きたまま乳製品へ添加する技術は大変難易度が高いものでした。森永乳業では乳製品に添加しても強く生き残る特別な菌を選抜したり、酸素を通しにくい特殊な容器を使用したり、ビフィズス菌を守る特殊な乳酸菌を配合したりとさまざまな工夫によってビフィズス菌入りの乳製品を作り上げています。1971年、日本ではじめて乳製品への活用に成功したのは森永乳業だったんですよ。
そもそも森永乳業がどうしてビフィズス菌の研究するようになったのか? きっかけはやはり赤ちゃんでした。創業間もなく赤ちゃん用の粉ミルクの製造・販売を開始していた経緯から、赤ちゃんの健康を守るため、健康な赤ちゃんのおなかに多く棲んでいるビフィズス菌に着目。ビフィズス菌が赤ちゃんの健康を守っているに違いないと研究を続けた結果、赤ちゃんだけでなく大人にも健康効果があると確信し、苦心の末に乳製品化にこぎつけたというわけです。
ビフィズス菌と乳酸菌って違う菌なの!?
- おなかに良い菌というと、ビフィズス菌と乳酸菌をすぐに思い浮かべます。正直なところ、違いがよくわかりません...。
- 乳酸菌が生み出すのは「乳酸」、ビフィズス菌は「乳酸+酢酸」。大腸をホームとするビフィズス菌は、腸内環境改善のキープレーヤーです。
腸内においてビフィズス菌は、
乳酸菌よりも......?
read more
ビフィズス菌と乳酸菌は、分類学上は全く違う生き物なんですが、ビフィズス菌も乳酸を一部作り出すことから長い間同じ仲間だと勘違いされていました。ここでは主に2点(1)産生する物質、(2)棲んでいる場所、を中心に両者の違いをご紹介します。
「乳酸菌」とは産生する物質の多くが乳酸である細菌群の総称で、いろいろな菌をまとめてこう呼んでいます。ビフィズス菌も乳酸を産生するのですが、「酢酸」(いわゆるお酢)をより多く作り出していることから乳酸菌の仲間ではないんです。現在、生き物の分類は遺伝子情報で行われることが一般的ですが、この遺伝子情報から両者は大昔より別々な生き物として進化を遂げてきた全く異なる細菌だということがわかっています。
乳酸菌はいろいろな菌のことですから、地球上のさまざまな場所に存在しています。一方で、ビフィズス菌は主にヒトや動物の腸内に存在し、酸素があると死んでしまいます。...と聞くと、どこでも生きられる乳酸菌の方が強そうなイメージを持ちますよね。確かに乳製品に添加することを考えると乳酸菌のほうが扱いやすく圧倒的に簡単なんです。でも、重要なのは、健康のカギを握る腸内細菌の棲み処「大腸」の環境で活躍ができるかだと考えています。大腸管腔内は酸素がほとんどなく、栄養分も少ない厳しい環境。そこでは腸内に棲んでいない種類の乳酸菌は栄養不足になりますが、逆にビフィズス菌は元気に働くことができるんです。言ってみればビフィズス菌は「腸内専属プレーヤー」なのです。
その差は腸内に棲む菌数にも現れます。ビフィズス菌と乳酸菌(Lactobacillus属)の数は、99.9:0.1と言われるほどビフィズス菌が圧倒的に多数。もちろん乳酸菌も健康に有益な菌ではあるのですが、腸内環境の改善という観点では、大腸で何十倍、何百倍も力を発揮するビフィズス菌を摂るほうが効率的と言えるのです。
短鎖脂肪酸は健康の攻守の要!
- ビフィズス菌が生み出す酢酸はどのような役割を果たしてくれるのですか?
- 殺菌作用に整腸作用など。ひと口に言うのが難しいほど大活躍しています。
腸が全身の健康に
関係している......?
read more
ビフィズス菌が生み出す酢酸をはじめ、酪酸やプロピオン酸などをまとめて「短鎖脂肪酸」と言います。これらは免疫や代謝機能など全身の恒常性を維持・コントロールする物質として、近年非常に関心が高まっているんです。
腸内細菌が作り出す物質で最も多い短鎖脂肪酸が酢酸です。腸内に侵入してきた病原菌を殺菌したり、これら有害な菌や有害物質の体内への侵入を防ぐ腸管バリアの機能を高めたり、大腸で作られた便を押し出すぜん動運動を活発にしたりなど、さまざまな作用を通じて腸内の健康に貢献していると考えられています。腸内で作られた酢酸の一部は血流に乗り全身へと巡っていくので、酢酸が活躍するフィールドは腸内以外にも広がることが分かっています。