2019年03月18日 研究開発

―アイルランドコーク大学との共同研究から―

腸内細菌はどこから来るのか?
入浴習慣が家族間で腸内フローラの伝播に関与
科学雑誌『Scientific Reports』誌に掲載


森永乳業は、育児用ミルクを開発する過程で赤ちゃんの腸内フローラ※1、ビフィズス菌に着目し、その研究を50 年以上行っております。近年、世界中で腸内フローラ研究が盛んに行われておりますが、当社では、腸内フローラ、ビフィズス菌研究を更に発展させるべく、2016年7月よりビフィズス菌・乳酸菌研究の先進国であるアイルランドのコーク大学施設内にある「APCマイクロバイオーム研究所」※2と共同研究を進めています。

これまで、ビフィズス菌は赤ちゃんが産まれる際、母親の産道を通って受け継がれること(母子伝播)で腸内に定着することが通説となっておりましたが、2018年1月に同研究所との研究で、日本人では、母子間に限らず家族間(父子間や夫婦間)でビフィズス菌が伝播している可能性が示されました※3。そこで今回、家族間での腸内細菌叢伝播経路として日本人特有の入浴習慣に着目した研究を行ったところ、以下の3点が明らかになりました。


①入浴後の浴槽水と入浴した被験者の腸内には共通の腸内細菌が存在していた。
②浴槽内より生きたビフィズス菌が検出され、そのゲノム情報は被験者の腸内に棲息するビフィズス菌とほぼ同一であった。
③子どもと両親が一緒に入浴する家族と、別々に入浴する家族では、前者のほうが共通の腸内細菌の種類が多かった。


以上の結果より、ビフィズス菌をはじめとする腸内細菌の家族間伝播は、家族が一緒に入浴するという習慣を通しても起きている可能性が示されました。



※1 人の腸の中には、数百種類、数百兆個の細菌が棲んでいます。これらの細菌が腸内に棲んでいる状態は、まるで植物が群生する花畑のようであることから「腸内フローラ」と呼ばれています。近年、腸内細菌がいろいろな疾病や肥満に影響を与えていることを指摘する研究が数多く発表されており、腸内フローラをバランス良く保つことが健康のカギであると考えられています。

※2 アイルランドのコーク大学(University College Cork) 内にある APC マイクロバイオーム研究所(APC Microbiome Institute)はアイルランド科学財団(SFI)の国立研究センターの一つで、2003 年創設以来、食と医療の分野で様々な研究成果をもたらし、トムソン・ロイター社の評価では科学
分野における世界第2位にランクされております。同研究所の研究テーマは(1)分子微生物学、(2)長寿に向けた食事と細菌、(3)脳腸相関、(4)宿主と細菌の関連性の 4つに大別されており、当社は(1)分子微生物学分野のDouwe(ダワ) van(ヴァン) Sinderen(シンデレン) 教授のもと、ビフィズス菌の遺伝子情報(機能ゲノム学)を中心に共同研究を実施しております。

※3 出典:Genomic diversity and distribution of Bifidobacterium longum subsp. longum across the human lifespan.




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