研究開発ストーリー 商品開発

森永乳業の
牛乳開発

牛乳の本当のおいしさをお届けしたい

コクがある。さっぱりしている。後味が良い。甘みがある。生乳のもつ、これらの風味をどうしたら多くの方にお届けできるだろうか。この想いを込め、人の五感に加え、森永乳業が培ってきた技術を駆使して開発した牛乳が「森永のおいしい牛乳」である。

搾りたての味をお届けしたい

おいしい牛乳をもっと多くの方に

2002年のまだ寒さ厳しい2月、「牛乳の本当のおいしさをお届けしたい」「もっとたくさんの方に牛乳を飲んでもらいたい」との想いから、新しい牛乳の開発がスタートした。
想いを語るのは簡単だが、どうやって具体的なコンセプトに落とし込むか、原料の生乳を殺菌するだけの牛乳にどのように付加価値をつけることができるか。それは決して簡単な課題ではなかった。まず、市場ニーズから理想のおいしさを再構築し、商品コンセプトをつくる。次に、それを具現化するために技術シーズから製品化へアプローチする開発手法を採った。

市場ニーズを満たす理想のおいしさ

搾りたての牛乳の風味を把握するため、関係各部と協力して「搾りたての味」を知りつくす全国約600名の酪農家にアンケート調査を実施。その結果、「コクがある」「さっぱりしている」「後味がよい」「甘味がある」などに絞られ、「コク」と「キレ」が牛乳のおいしさのキーワードであることが浮かび上がった。
同時に、牛乳を飲まない人の調査も行った。当時の全国牛乳普及協会での、牛乳・乳製品の消費動向に関する調査から、風味に関して「においが嫌い」「味にくせがある」「飲んだあと、口に残る」「口当たりが悪い」などが上位にあげられ、においと味のくせが牛乳の悪いイメージとなっていることが分かった。
これらの調査から、「においにくせがなく、口あたりとのどごしがよくて、後味がすっきりした、本当においしい牛乳」がコンセプトとして立案された。

技術シーズからのアプローチ

脂肪球の均質化

次に、商品コンセプトを具現化するため、開発に着手する以前に研究を重ねた技術シーズからさまざまなアプローチを行った。コンセプトに近い風味には、従来の間接加熱殺菌機ではなく直接加熱殺菌機の方が良いことがわかった※。しかし、「後味の良さ」「さっぱり感」から「後味にキレ」がある牛乳と評価されたが、「コク」については、従来の殺菌法の方が評価された。殺菌法だけでは「コク」と「キレ」を両立させることはできなかった。そこで、この両立を目指した製造方法の再検討が行われた。
乳脂肪分、無脂乳固形分が高くなると「コク」は出るが、「後味の良さ」「キレ」はなくなる。牛乳の原料は生乳のみで、他の成分を加えることはできず、味は変えられないと考えられていた。こうした固定概念を打破するため、製造工程での物理的な工夫から「コク」を与えることができないか検討し、製造工程の均質化に注目した。均質圧力を変えると脂肪球の大きさが変わり、それとともに牛乳の風味も変化する。脂肪球サイズが大きいほど「コク」は強く感じられる。脂肪球粒子サイズの小さい従来の牛乳と、脂肪球粒子サイズの大きな牛乳の間に、コンセプトにふさわしい「コク」が生まれる脂肪球サイズを見出したのだ。

※従来の殺菌法は重ねたステンレス板の間に牛乳と熱水を交互に流し込む方法。対して、「森永のおいしい牛乳」は蒸気で牛乳を包み込むという新しい殺菌方法を採用。

森永FTP製法とパッケージの工夫

比較評価による科学的裏付け

さまざまな試行錯誤が繰り返された結果、開発から1年余りを経て、搾りたてのおいしさを生み出す新しい製法として「森永FTP(Fresh Taste Process)」を確立させ、これを特許化した。
科学的裏付けとして、この製法によるFTP牛乳と他社製品との比較評価も行った。官能評価で既存の他社製品と比較したところ、「さっぱり感の好み」「のどごしの良さ」「匂いの強さの好み」「おいしさ」の評価は高く、「コクの好み」は同等だった。
また、理化学特性では熱履歴指標(加熱による影響)の比較を行い、FTP牛乳は従来の間接加熱殺菌機による牛乳より、熱の影響が小さいことが分かった。香気特性では、牛乳独特の「におい」の主体となっている成分が他社製品よりも少なく、香気の特徴がより生乳に近いことを示した。味覚/においセンサ解析では、FTP牛乳はいずれも他社製品と明確に判別され、従来とは差別化された牛乳であることが客観的に示された。味覚センサでは、濃厚感とクセが弱い牛乳と評価され、においセンサでは、全体のにおい成分量が少ない牛乳と評価された。

おいしさを守るパッケージ

光劣化を抑える濃紺のパッケージ

工場から出荷された後も、お客さまが口にするまで「搾りたての味」のおいしさを守りたい。この想いから、出荷後の風味劣化の原因も追求した。
光による風味劣化に着目し、分析部門と協働して容器の色(白、赤、青、緑、黒)と風味・香気の関係を調査。各容器に充填した牛乳を光照射した後、風味評価すると、白容器に充填した牛乳が最も風味劣化が大きく、黒が最も小さかった。赤・青・緑は同等の評価で、白と黒のほぼ中間の評価だった。香気については、風味劣化が大きいほど青臭さの原因となるヘキサナール量が増加した。このことから、ヘキサナールが光劣化の指標になることを見出し、容器は黒に近い濃紺に決定。濃紺の容器に充填したFTP牛乳はヘキサナールの生成量が抑えられ、味覚センサ解析でも風味劣化が抑えられたことを証明した。
こうして完成した「森永のおいしい牛乳」は、2003年9月に関西エリアで先行発売。その後、全国発売となった。開発コンセプトにのっとり、他社製品と差別化され、何より品質にこだわった牛乳として、おいしさをお届けしているのである。

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