研究開発ストーリー 商品開発

森永乳業の
ヨーグルト開発

日本のヨーグルト市場に新たなカテゴリーを築きたい

日本のヨーグルト市場はプレーンタイプを中心に伸び、現在では、フルーツヨーグルト、機能性ヨーグルトなど、さまざまな商品が店頭に並ぶ。そんな中、さらなる市場拡大に向けて新たなカテゴリーの商品が望まれていた。日本で初めてのギリシャヨーグルト「濃密ギリシャヨーグルト パルテノ(以下パルテノ)」は、どのようにして生まれたのだろうか。

日本で初めてのギリシャヨーグルトを

転換期を迎えていた日本のヨーグルト市場

開発がスタートした2008年当時、ヨーグルトといえば健康や美容のために毎朝食べるものというとらえ方が一般的だった。そんな市場に、「新たなブランドを築こう」というヨーグルトマーケティング部門の熱い思いから、新たな挑戦が始まった。
市場の調査を続ける中、ヨーグルトのおいしさでお客さまに満足いただけてないことに気づき、おいしさ(嗜好性)の追求を行った。そんな中、1990年代後半からヨーロッパでギリシャヨーグルトのブームが起こり、2004年のアテネオリンピックを機に、アメリカ東海岸で急速に広がりを見せていることに注目。「これなら日本のヨーグルト市場に新たな市場が開けるかもしれない」とひらめくものがあった。森永乳業は「ビフィズス菌」の研究と製品開発で知られているが、実は嗜好性の高いヨーグルト開発にも実績がある。例えば「森永アロエヨーグルト」は、フルーツヨーグルトに新しいジャンルをつくり出し、ロングセラー商品となった。これはほんの一例である。

今まで味わったことのない「おいしさ」と「食感」

ちょうどその頃、海外の商品展示会に参加し、いろいろなヨーグルトを試食してきた研究所スタッフもギリシャヨーグルトに大きな興味を示していた。持ち帰ったサンプルを試食した研究員も、今まで味わったことのない濃厚さと食感に強く惹かれるものを感じていた。
そんな時、マーケティング部門からギリシャヨーグルトをつくれないだろうかという相談が舞い込んできた。国内の競合他社に先駆けて開発したいという。この時点では開発方法の見当さえつかなかったが、必ずできると迷わず挑戦することにした。ビフィズス菌の研究開発にも表れているパイオニア精神がここでもいかんなく発揮されたのだ。

濃厚なヨーグルトをつくる製法を模索

「おいしさ」にとことんこだわり、水切り製法にたどり着く

伝統製法のギリシャヨーグルトは、生乳を含む乳原料であるヨーグルトミックスを発酵させてできたヨーグルトを、ギリシャ伝統のモスリンと呼ばれる布袋を用いて水切りを行って、つくられる。水分や乳清(ホエー)を除去した濃厚な味わいと食感が特徴である。しかし、このギリシャヨーグルトを工業的に製造するノウハウは社内になく、開発当初は手探りの状態だった。まず、本場のギリシャヨーグルトをさまざまな角度で分析することからスタート。ヨーグルトから乳酸菌を分離し、菌の種類と特徴を洗い出す。さらに、成分の組成や粘度や組織の状態を分析し、サンプルを幾例もつくった。
乳たんぱく質などの乳成分を添加し、最初から乳成分の濃いヨーグルトミックスを発酵させる製法を用いると、濃厚なヨーグルトはできるが雑味や粉っぽさが感じられ、ギリシャヨーグルト本来のおいしさが損なわれる。原因は、たんぱく質とミネラルの関係にあった。ギリシャヨーグルトの特徴は、たんぱく質含量が高いことであるが、たんぱく質含量を高くするとミネラルも多く入ってしまい、雑味を出していると考えられた。おいしさにこだわる以上、この製法ではお客さまに満足いただける製品をつくるのに限界がある。そこで、原点に立ち返り、本場の伝統的なギリシャヨーグルトと同じ水切り製法を取り入れることにした。水切り製法であれば、乳成分の添加を必要とせずに余分な雑味を取り除いて、すっきりとした味わいのギリシャヨーグルトをつくることができる。

新設備の導入と運転条件の決定

水切り製法で検討を進めることが決まった後も、開発チームはさらに様々な原料、乳酸菌を使用したヨーグルトの試作を行った。基礎検討で高評価となった処方は、工場の製造ラインを想定した研究所の実験設備でテストを行った。数kgのサンプルを作るために、100kgのヨーグルトを用意し、濃縮する検討を繰り返した。テストでは、濃縮し過ぎると粉っぽくなり、濃度が低いと水っぽくなる。日本人の好みに合う味と食感のバランスは、たやすく実現できるものではなかった。試行錯誤しながら、濃縮前の乳固形分量、濃縮に適した乳酸菌の選択、何倍まで濃縮するかといった種々の課題を検証し、望ましい処方を確定した。その処方を用いて工場に導入した新設備でテストを開始したが、そこでも大きな壁にぶつかった。工場テスト開始当初、つくられたヨーグルトは水っぽかったのだ。ヨーグルトの製造にかつて用いたことのない新設備、研究所の実験設備と異なる運転条件などによって想定していた濃密な食感のギリシャヨーグルトは容易にできなかった。工場テストでも最適な濃縮率の設定が課題となった。工場の濃縮設備は、当初、製造開始、安定稼働、製造終了直前のそれぞれのステップで、ギリシャヨーグルトの乳固形分濃度にばらつきが発生しており、その結果水っぽいヨーグルトになっていた。そこで設備の運転条件と濃縮状態を分析し、濃縮時の各ステップに対応して細かく運転条件を設定、最適解を求めて試行錯誤を重ね、十数回の工場テストを行った。開発開始から約2年半。ついに本場のギリシャヨーグルトにも負けないおいしさを引き出せる製法にたどり着くことができた。シンプルな原材料と、最適な乳酸菌を使用し、発酵と濃縮に工夫を重ねた製法だ。この製法のヨーグルトは、粒子が密に整っているため、スプーンを逆さにしても落ちないほど濃密な食感と光沢があり、なめらかな舌触りとなり、他のヨーグルトにはないおいしさに加えて、食べたときの至福のひとときも提供できる商品に仕上げることができた。日本初のギリシャヨーグルト「パルテノ」は、こうして誕生した。

訴求ポイントは、おいしさだけにとどまらない

「パルテノ」は、おいしいだけではなく栄養価も高い。一般的なプレーンヨーグルトと比べて「パルテノ プレーン」は、たんぱく質が9.9g(100gあたり)と2倍以上あり、乳成分も無脂乳固形分14.4%、乳脂肪4.5%と生乳に比べて高い。それでありながらカロリーは100kcal(100gあたり)と、マヨネーズに比べると約7分の1と低いのである。圧倒的になめらかな舌触りと濃厚な味わいでありながら、高たんぱくでヘルシー。水を切っているので直接パンに塗るもよし、酸味が少ないので野菜やフルーツはもちろん、和洋中どんな食材とも合わせることができる。さまざまな料理に活用し、手軽にたんぱく質を摂取できる、「おいしさ」と「健康」が両立し、料理まで使える、まさに新しいカテゴリーのヨーグルトが誕生したのである。