研究開発ストーリー 商品開発

森永乳業の
アイスクリーム開発

大人が満足できるシンプルで上質なアイスクリームをめざして

大人向けアイス市場は、アメリカ発のプレミアム系商品が圧倒的な存在感を示す。だからこそ、他社が真似できない本格的なアイスクリームバーをつくり出す。研究者のこの挑戦には、絶対的自信を裏付ける森永乳業の確かな技術があったのである。

これまでにないアイスクリームバーを

大人が満足できるアイスクリームバー

2005年の発売以来、売上を拡大し続け、マルチパックシェアNO.1(※)にまで成長した「PARM(パルム)チョコレート」。このアイスクリームの開発は、発売1年半前の2003年秋、研究所の技術シーズ提案からスタートした。
森永乳業のアイスクリームとチョコレートの技術を結集して、他社が真似できないおいしいアイスクリームバーをつくりたい。メインのターゲットは、子どもではなく大人。味の違いが分かる大人の味覚を満足させる本格的なものを、というチャレンジングな開発テーマを掲げてのスタートだった。

※出典:2014年4月〜2015年3月 インテージSRI(金額ベース)

心強いアイスクリーム博士の存在

アイスクリームは主に気泡、脂肪球、氷結晶および未凍結相から構成される複雑な食品コロイド。特にフリージング(凍結)工程の制御は、融解性や硬さなどの物性や舌触りなどの官能特性に与える影響が大きい。 森永乳業には、アイスクリームのおいしさを実現する成分・製法・物性の研究に真摯に取り組んできた研究者がいた。
日本では珍しいアイスクリームで博士号を取得した研究者だ。この“アイスクリーム博士”は、自身の研究成果に基づいてフリージング工程での脂肪球粒子の動きを徹底的に解明したり、アイスクリーム組織に与えるフリージング工程について数学的モデルを駆使して解析を行ったり、詳細な検証を行った。

アイスクリームという、広く愛されるポピュラーな食品も、このような基礎的研究に裏付けられた技術によっておいしさが実現されている。
「新商品には、新しい技術がなくてはならない」このポリシーは、後に続く開発技術者の遺伝子として引き継がれている。まさに、森永乳業の技術開発の文化がここにあるのだ。

おいしさの秘密は、なめらかな舌触りと口どけの良さ

技術を結集し新製法の開発へ

こうした研究成果の知見を活用し、より低温で充填して急速硬化させ、組織を微細化する「急速フリージング製法」を見い出した。「PARM(パルム)」のアイスクリーム部分の特徴であるなめらかさの秘密は、アイスクリームを冷却する工程に隠されている。急速凍結することで粒子が細かい状態で存在し、小さい結晶がたくさんできるため、非常になめらかな舌触りとなるのだ。

大変だったのは、実際に工場でアイスクリームを製造する過程だった。なめらかな舌触りが実現できるパラメーターを製造・充填装置に適応させるため、数カ月もの間、食感に影響を与える工場の設備に改良を加えていった。そして改良を加えるたびにアイスクリームの配合を微調整し、製造条件を変更する試行錯誤を繰り返した。
また、クリームや脱脂濃縮乳などの乳原料を厳選使用することも、この本格的なアイスクリーム実現の糸口を見出すことにつながった。味や食感、口どけはもちろん、柔らかさや甘さの程度までとことん追究し、配合の調整を繰り返す。このようにして、コク深くなめらかな食感のアイスクリームの開発に成功したのだ。

アイスクリームと一緒に口の中で溶けるチョコのおいしさ

チョコの口どけの秘密は、素材と温度へのこだわりにある。「PARM(パルム)」のチョコは、口の中に入れるとアイスクリームと一緒に溶ける。噛み出しが軟らかく、生チョコをアイスクリームにコーティングしたイメージ。従来のパリパリとしたチョコと異なり、アイスクリームから剥がれ落ちない特徴をもっている。社内には「パリパリの方がいいじゃないの」という声もあったが、あくまでも口どけの良さにこだわった。
これを実現するため、数種類の植物油脂を組み合わせ、融解状態に特徴のある独自配合のコーティングチョコを開発。この完成には1年の歳月を費やし、担当者はチョコの試食で吹き出物がなかなか治まらなかったという裏話もある。

こうした苦労を積み重ね、従来にない全く新しいタイプのアイスクリームバー「PARM(パルム)」が完成。食べるときにチョコが剥がれ落ちず、冷凍下でも柔らかい食感で、口の中でチョコがアイスと一緒に溶ける。大人の味覚を満足させるこのアイスクリームバーは、発売5年後の2010年、日本食糧新聞社「新技術・食品開発賞」を受賞。名実ともに、他社が真似できない本格的なアイスクリームバーとして認知されたのである。