栄養研究

乳たんぱく質

たんぱく質の「質」の違いに着目。
さまざまなニーズに対応すべく深化を
遂げる。
森永乳業の乳たんぱく質研究
ラクトフェリン

実は奥が深い
乳たんぱく質の世界を究めたい

たんぱく質は、古代ギリシャ語の「Proteios(第一のもの)」が語源となっていることからもわかるように、私たちのからだにとって大事な栄養素のひとつです。私たちのからだを構成するたんぱく質は、毎日合成と分解を繰り返しています。つまり、筋肉や肌などは日々、少しずつ作り変えられているのです。その合成の原料となるのは、食事から得られるたんぱく質です。たんぱく質にもいろいろと種類はありますが、なかでも「乳たんぱく質」は消化吸収が良く、アミノ酸バランスにも優れていることがわかっています。
乳たんぱく質は、牛乳はもとよりさまざまな加工食品に含まれており、特に育児用ミルクや流動食では乳たんぱく質は重要な栄養素として利用されています。森永乳業では、この乳たんぱく質について長年研究を続けており、その成果はさまざまな製品に活かされています。

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私たちの生活に必須なたんぱく質

たんぱく質(英語で“Protein”)は、筋力アップのために摂るものと思われがちですが、実はそれだけではありません。筋肉以外にも、肌、爪、毛髪、血液、その他さまざまな臓器や、代謝をつかさどる酵素などの構成成分であり、「からだのもと」と言うことができます。たんぱく質は私たちが日々の生活を健康に過ごすうえでなくてはならない成分なのです。


ラクトフェリンラクトフェリン

たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されていますが、このうちの9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、特に重要なアミノ酸とされています。良質なたんぱく質はこれら必須アミノ酸を単に多く含んでいるというだけではなく、いかに効率的に小腸から吸収されるかということを評価する必要があります。近年、それぞれのアミノ酸の吸収率の違いを考慮してたんぱく質の品質を評価したDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)が注目されています(Dietary protein quality evaluation in human nutrition: Report of an FAO Expert Consultation. 2013)。森永乳業でもいち早くこの考え方を取り入れ、取り扱うさまざまなたんぱく質素材について、その評価をおこなっています。そのデータは育児用ミルク《森永 はぐくみ》のたんぱく質組成の設計など、森永乳業の製品開発に活かされています。

カゼインとホエイたんぱく質

乳たんぱく質とは、牛乳に含まれるたんぱく質の総称で、「カゼイン」と「ホエイたんぱく質」の大きく2種類に分けることができます。いずれも良質なたんぱく質ですが、構成するアミノ酸やその吸収速度などで異なる特徴を持っています。
1つめのカゼインは、乳たんぱく質の主要な成分として約80%を占めています。牛乳に含まれるカゼインは比較的ゆっくりと吸収されることが特徴です。摂取後長い時間にわたって血中のアミノ酸濃度を維持でき、体内のたんぱく質の分解を持続的に抑制することから、例えば睡眠前に摂取して睡眠中の筋肉分解を抑制する効果が期待されます。
2つめのホエイたんぱく質は、乳たんぱく質の約20%を占め、吸収速度が速いことで知られています。アミノ酸構成にも特徴があり「分岐鎖アミノ酸(BCAA)」が豊富です。身近なところで言うと、アスリートが摂取する「プロテイン」の原料として知られています。私たちの筋肉を構成するアミノ酸にも分岐鎖アミノ酸(BCAA)が多く含まれるので、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の多いホエイたんぱく質は筋肉合成に有利なのです。このホエイたんぱく質は、主にチーズの副産物として得られるホエイから製造されます。

乳たんぱく質の「質」を極める。
育児用ミルクをより母乳に近づけるために

乳たんぱく質は、すでに私たちの日常生活の中に浸透しており、さまざまな場面で食されています。森永乳業も、それぞれの乳たんぱく質の特徴を活かした製品の開発や、さまざまな世代やライフスタイルに適した摂取方法を提案することで、乳たんぱく質の新しい価値をより多くの方々に知ってもらいたいと、日々研究を重ねています。

例えば、森永乳業の代表的な製品である育児用ミルクの場合、成分組成を母乳に近づけることが重要になります。そのためには、ヒトの母乳と牛乳、それぞれのたんぱく質の違いを知る必要があります。そこには乳の中に「たんぱく質がどれだけ含まれているか」といった量的な違いと、「どのようなたんぱく質が含まれているか」といった質的な違いがあります。牛乳には母乳のおよそ3倍のたんぱく質が含まれているので、森永乳業の育児用ミルクの開発ではまずそれをヒトの赤ちゃんに適した「量」に調整することに始まり、さらに近年では、特に乳たんぱく質の「質」に着目した研究にも取り組んでいます。

先ほど乳たんぱく質にはカゼインとホエイたんぱく質の大きく2種類のたんぱく質があることをご説明しました。どちらも乳児の成長に必要なアミノ酸を多く含んでいますが、カゼインにはメチオニン・フェニルアラニン・ヒスチジンなどが多く、ホエイたんぱく質にはシステイン・スレオニン・トリプトファンなどが多いという特徴があります。このため、カゼインとホエイたんぱく質をバランスよく配合することが重要になるのです。

例えば《森永 はぐくみ》では、カゼインとホエイたんぱく質の比率を調整するとともに、ホエイたんぱく質を酵素で消化したペプチドを配合しています。これにより、ホエイたんぱく質に多いシステインやトリプトファンなどのアミノ酸バランスを母乳に近づけつつ、たんぱく質の消化吸収性を高めているのです。

はぐぐみ

アミノ酸の種類

アミノ酸の種類アミノ酸の種類

森永乳業では、このような乳たんぱく質の栄養研究の成果を世界に向けて発信しているほか、ドイツにある子会社「ミライ社」でさまざまな乳たんぱく質原料を製造し、世界中の多くの育児用ミルクメーカーや流動食メーカーなどに供給しています。

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ミライプロテイン

ミライ社は、ドイツ最南部の酪農地域に立地しています。ミライ社では、乳たんぱく質濃縮物、ホエイたんぱく質濃縮物、ミセラカゼインなどの良質な乳たんぱく質素材を製造しており、そのいくつかは「ミライプロテイン®」として日本国内でも販売されています
https://miraiprotein.jp)。

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森永乳業では、ミライ社で製造している乳たんぱく質素材についてのDIAASを評価しています。DIAASは食物中のたんぱく質に対して、アミノ酸のバランスと吸収率を加味したスコアですが、ミライ社の乳たんぱく質素材 はいずれも100を超える高いスコアであり、質の良いたんぱく質であることが分かります。


DIAAS

高齢者や疾患を持つ方のための流動食にも乳たんぱく質の力を

高齢やさまざまな疾患により、通常の食事が摂取できない方のための流動食においても、乳たんぱく質は重要な役割を果たします。流動食は限られた摂取量の中で、必要な栄要素をまかなわなければなりません。そのため、質の高いたんぱく質である乳たんぱく質は、森永乳業グループの流動食において必要不可欠な栄養素となっています。

流動食には、さまざまな乳たんぱく質素材が利用されており、このうちカゼインにはいろいろな栄養成分をうまく混ぜ込むことが出来る(乳化)作用があります。流動食の製造においてもこのカゼインの乳化作用を利用することでさまざまな栄養素を高濃度で含む製品を製造することができるのです。

研究のイメージ

クリミール

ラクフィア※流動食は森永乳業のグループ会社である株式会社クリニコの製品です。

今後の展開

私たちは現在、生体が必要とするたんぱく質の量を測定できる「指標アミノ酸酸化法」※という研究手法にも着目し、たんぱく質の組み合せと質に関する研究をさらに進めています。


また、乳たんぱく質は製造方法によってその特徴にさまざまな違いが生じます。このため開発する製品の目的によって乳たんぱく質の特徴を使い分ける、あるいはさまざまな特徴の乳たんぱく質を組み合わせることで、さらにその活用の幅を広げていきたいと考えています。

研究のイメージ

乳たんぱく質のプロフェッショナルとして、今後も森永乳業は、皆さまの毎日、そして健康寿命の延伸に貢献できるよう研究を続け、さまざまな世代やライフスタイルに適した製品をお届けしていきたいと思っています。 ※指標アミノ酸酸化法:摂取したたんぱく質(アミノ酸)量が体内のたんぱく質合成量に対して不足か過剰かを測る評価方法。体内の合成量と釣り合う摂取量を推定することで、たんぱく質の必要量が求められますが、より少ない「量」で必要量が賄えるたんぱく質ほど効率的で「質」の良いたんぱく質だと考えられます。

たんぱく質にこだわった森永乳業の商品(一例)

たんぱく質にこだわった森永乳業の商品

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